UTAU-BLOG 3

by YOSHIKI HORITA from iMAGINATIONS

発信。発振。


上京してきた頃だと思うので、もうずいぶん前の話だけれど。書店で何気なく、月刊ムーをパラパラと立ち読みしていた時のことだ。

今は分からないが、当時は多くの雑誌に文通コーナーがあって、同じ趣味嗜好を持つ人をつなぐのに一役買っていた。ムーの中にも、やはりそれは設けられており、投稿者は限られた文字数の中、自分は何が好きが、どんな人と知り合いたいのかを書く。小さなスペースに収まるよう、誰もが言葉を厳選しているのが見て取れる。ゆえに、どのアピールも自然と濃い。そして、こういう所にこそ雑誌の個性が出るものだ。「幽体離脱の経験がある人。お話ししましょう」「UFOを降ろす会を開きませんか?」的な内容が所狭しと並ぶ。凄くおもしろい。

読み進めていくと、次のような投稿が目に飛び込んできた。前半の細かい部分がうろ覚えだが、最後だけはしっかりと憶えている、今でも。


「アルテミス、セレーネー、オルフェウス。これらの言葉にピンと来た方、お手紙下さい。あとB'zが好きな人も大募集!」


ムーで、B'zである。


おそらく彼女は、B'zファンの友達とは不思議系の話ができず、不思議系が好きな人とはB'zの話ができず、ひとり悩んでいたのではないだろうか。ようし、それならばと、どちらも好きな人を見つけるべく立ち上がったに違いない。投稿からは何となくB'zのほうを推しているようにも見えるが、その溢れてしまう感じがまた、いい。

僕は確信する。彼女はあの後、B'zも、不思議も、どちらも大好きな人と出会えたはずだと。一緒に宇宙の謎を語りながら、時折「ウルトラソウッ!」「HEY!」と合いの手を入れたりしているのだろう。素晴らしいことである。

彼女がもしも「ムーには不思議なことしか書いてはいけないのでは?」と考えていたとしたら、この前向きな行動は生まれておらず、その先に広がる出会いも永遠に無いままだった。自分が好きなことを、それを好きな人と分かち合いたい。ただ純粋な気持ちが、最初の一歩を踏み出す力になったのだ。僕が今もこれを記憶しているのは、組み合わせの妙もさることながら、おそらくその気持ちにインパクトを感じたからである。正直さは、かくも力強い。


去年どこかで聞いて、なるほどと思ったのが「自分の仕事や好きなことは、おばあちゃんにも理解できるくらい分かりやすく」というような話だ。それくらいシンプルに、自分がこういう人間だと知ってもらえたら、そして相手のことも知ることができたら、人間関係はとてもスムーズになる。自分の得意なこと、好きなことは、誰かの役に立てるかもしれない。自分がいま必要としている力を、誰かが持っているかもしれない。それを分け合うことができれば、お互いにとても幸せである。そのためには、やはり正直であることだろう。何が好きなのか、どう生きているのか、自分を伝える努力を惜しまなければ、響き合える人に出会う確率は何倍にも広がる。自分から発信、発振しなくては。待っているだけでは何も起こらない。

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http://spark.ieee.org/files/2014/06/bigstock-Equalizer-sound-wave-backgroun-40273078.jpg


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