UTAU-BLOG 3

by YOSHIKI HORITA from iMAGINATIONS

聞きたい言葉を、言えばいい。

コロナ騒動の中、「もうネガティブな情報は見たくない」という声を耳にする。

気持ちは本当によく、よーくわかる。

ただ、その情報が事実だとすれば、それは果たして「ネガティブ」なものなのだろうか。



僕は今、世界でいち早く全土ロックダウン(封鎖)を実施したインドにいる。

13億人、外出禁止。

信じられない光景が、ひたすら目の前に広がっている。

見たくなくても広がっているこの場合、ネガティブもポジティブもない。

そこにあるのは、ただの現実と事実である。

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昨年出版された『読みたいことを、書けばいい。』という本がある。友人のサトケンが勧めてくれた一冊だ。

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読みたいことを、書けばいい/田中 泰延 (著)

著者の田中泰延さんは、コピーライターとして電通に24年勤めた後、自分が読みたいものを書くため退職したという。ページを開くや一気に読めてしまう魅力的な文章は、いわゆるテクニックというより、「書く」という行為に向かう太い根を感じさせるものだ。

なぜ書くか?という問いに対して、著者のように「自分のため」と即答できる人が、この世界にどれだけいるだろうか。そして、ここに書かれている「自分のため」とは、自己満足的な浅いものではなく、逆に、深く自分とつながるためだというのだ(結果、それが誰かともつながるということも書かれている)。

第4章 その4:文字がそこへ連れていく、という項のタイトルが、この本を象徴している。考え、調べ、言葉にして、書く、という流れが、自分との対話となり、それまで知らなかった自分に出会い、新しき「そこ」へと連れて行ってくれる。自分の言葉をネット上などで発表する、しないに関わらず、言葉や文章を通して、思考と、自分と、他者と、現実と、その他にも色々とのつながりに、新しい視点を持てる一冊だと思う。興味を持った人はぜひ。僕からもお勧めしたい。

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今、この未曾有の事態を前にして思う。

ここで必要なことは何だろう?

一番大切にしたいことは何だろう?

そのためにできることは何だろう?

それらの問いを心に投げかけて、言葉で掘ってみる。誰に聞かせる訳でもない。自分の心の一番深いところから、正直に言葉にしてみる。

聞きたい言葉を、言えばいい。のだと思った。

いわゆる、ポジティブな言葉である必要は全くない。今の自分にとって、正直で自由な心の内を、言葉に、声にしてみることだと思う。それは、自分と対話し、自分を知り、自分を運んでくれるものになるのではないだろうか。それこそ、自分が今、本当に聞きたい言葉なのではないだろうか。言葉にすることで立ち上がる発見。『読みたいことを、書けばいい』から、また新たなヒントをいただいたと感じている。

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陸路も空路も完全にストップという状況下、我らが日本航空は、デリー空港から出発の臨時便を出してくれている。帰国のための片道便を、日本から飛ばしてくれているのである。さらに、デリー以外からも空港へ辿り着けるように、日本大使館は特別な書類を作成し、バス、タクシーが通行できるよう手を尽くしてくれている。これは、インド政府への力強い働きかけによるもので、今の状況を見れば、どれほど凄いのかということがよく理解できる。

僕はインドの航空会社で取っていたチケットがキャンセルとなり、まだ先が見えない状況ではあるけれど、多くの力がインド滞在中の邦人のため動いてくれていることに、とても勇気づけられている。また、日本から、インドから、他の国からも、励ましのメールがたくさん届いていて、どれほど気持ちが救われているか分からない。感謝ばかりが浮かんでくる。

現実を受け入れ、予測できることへの対策を考え、正しい情報を調べ、動き、帰国のタイミングを待っている。こうして言葉にするだけで、心が少し軽くなるものだ。

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