UTAU-BLOG 3

by YOSHIKI HORITA from iMAGINATIONS

怖れるなかれ - いま読むべき名著


今年の一月以降、僕に会った人へ、もれなく勧めている一冊がある。

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怖れるなかれ / サティシュ・クマール, ビノーバ・バーべ・著



ビノーバ・バーべを知る人は日本にどれくらいいるのだろうか。マハトマ・ガンディーの第一後継者として生涯、非暴力・不服従運動を指導した偉人。『怖れるなかれ』は、日本でビノーバを紹介した最初の本かもしれない。僕もこの本で知ったことを恥じずに告白しよう(ちなみにインドの友人たちへ「ビノーバを知っているか」と尋ねたら、ほとんどがYESと答えた)。なぜこれほどの人物を知らずにいたのかという驚きと、いま出会うことができたという感謝が混ざり合った読後であった。いや、そんな単純なものではない。「感動しました」では終わらない、人生を揺るがされる一冊だったのだ。



実は最初、なかなか読み進めることができなかった。1ページ、1ページ、めくるごとに「では、お前はどう生きているのか」と、問いかけられているようだった。すべてが大地にしっかりと根ざした、力強い言葉、言葉をとおしたエネルギー。時々、深く感じすぎて猛烈にしんどかったくらいだ。2月からのインド旅でもバッグに入れた。旅の中で、やっとじっくり読むことができた。インドにいる間はいつも細かい予定を立てず、時間(時計)を気にしないから、だったのかもしれない。そしてビノーバとサティシュの母国ということもあったかもしれない。ゆっくりと、確実に、染み込んでいくのを感じた。



インドにいる間に更新したブログ記事の中で、敬愛する星野道夫さんの名著『旅をする木』から、下の箇所を引いた。『怖れるなかれ』には、この問いかけと同じものを感じている。

「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕陽を一人で見ていたとするだろ。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうに伝えるかって?」
「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンバスに描いて見せるか。いや、やっぱり言葉で伝えられたらいいのかな」
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって……その夕陽を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」

旅をする木 / 星野道夫・著 より




親、子、学ぶ者、伝える者、つまりすべての人へ紹介したい一冊。日本での刊行に力を注いで下さった辻信一さん、上野宗則さん、翻訳の中久保慎一さんへ、心から感謝。そして、購入しようとしていたまさにその時、僕にこの本をプレゼントしてくれた、滋賀の花有子さんにも特大の感謝を。その一冊は、北インド・リシケシでいつもお世話になっているcafe okaeriのミチコさんへ、恩送りとしてプレゼントさせていただいた。今はcafe内の本棚で、多くの旅人の手と心に触れていることだろう。



『旅をする樹』と同様、引用したい箇所がとても多い本だ。これを書くにあたり選ぶことができなかったので、「今日必要な一文を」と直感で開いたページから。

しかし人間は、平静な心をつくり出すことができるのです。この世のすべての生きものが、ありがたい友のような存在と思えるのが本当です。

「自分を信じるのと同じように、すべての生きものを信頼する」

それが本当です。一体何を怖れるのでしょう? この世のすべては純粋で、神聖です。宇宙は素晴らしい。そこに何の問題もありはしません。もし何かまずいことがあれば、それは自分の目の問題です。自分が見るもの、それが世界です。もし赤色の眼鏡をかけたら、世界は赤く燃えているように見えるでしょう。「美は見る人の目の中にある」というわけです。

第4章 ワンネス スピリチュアリティと行動の哲学 より


感謝は言葉だけでなく行為へ代えたい。多くの人と共有したいという思いで、現在、僕の関わるイベントでは販売スペースも設けている。ぜひその手に取ってみてほしい。