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UTAU-BLOG 3

by YOSHIKI HORITA from iMAGINATIONS

スタジオ改称についてのご報告。


先日の投稿でチラリと触れたとおり、今年最初の新月に合わせて、主宰するレッスンスタジオの名称を Morning Lights Voice Therapy (ボイスセラピー)と改めた。

これまでVoice Training(ボイストレーニング)と看板を掲げていたのは、単純に誰の目にも分かりやすいであろうという理由からだった。ただ、初期の頃からどこかしっくり来ない感じはあって、それがだんだんと無視できなくなってきた。そこには、声と呼吸の鍛錬を継続する中で、いわゆるボイストレーニング的なアプローチだけでなく、その他の要素との組み合わせが自分の成長を大きく促してくれたからという理由がある。ヨガなどの呼吸法だったり、瞑想など心の整え方だったり、チャクラに意識を置いたり、スポーツのストレッチや身体の使い方だったり。

からだと、こころ。何よりこの双方のバランスを観察し始めたことが、声と呼吸の質を飛躍的に向上させてくれた。自分に限ればの話だが、ボイストレーニングのプラクティスだけでは、今のように声を楽しめていなかったと思う。声をひらく扉と鍵は、視野を広げれば本当にたくさんある。何ごとでも同じように基本は大切だけれど、その人だけが持つ輝きを活かすには、やはり個人個人に適した方法がある。心の状態を無視して身体だけに目を向けていては、それになかなか気づくことができない。大好きだったはずの唄なのに、方向を誤り、自ら苦しいものにしてしまう人をたくさん見てきた。僕にもかつてそんな時期があったからよく分かる。


世の中には、トレーニングを行なわずとも、いい声を聴かせる人がたまにいる。そういう人は天才と呼ばれたりする。幸か不幸か、僕は天才ではない。だから工夫して、試して、実験を繰り返してきた。デビュー前から長く指導を受けていた師の言うことも、そのまま鵜呑みにすることはなかった。何のためのトレーニングなのか、何に効果があるのか、実感が得られるまで納得しなかった。特にレコード会社と契約していた間は、ライブ、レコーディングと、プロの現場ならではの緊張感ある本番が続く。リハーサル、プリプロダクション、個人練習もぜんぶ録音、セルフチェックする機会は毎日のようにあった。テレビ、ラジオ、取材などで話す機会も多い。その中で、意識的な取り組みから声によい変化が感じられれば、とても嬉しかった。そういったひとつひとつの経験が、上辺の小綺麗な知識ではない、本当の意味での学びとなっていった。


その後、新人育成のレッスンオファーをいただいた時、最初は自分が教える側になるなんて考えられなかったが、知っていることを伝えるだけならと引き受けた。ところが、始めてみるとこれが実におもしろい。ひとりひとり、ここまで違うかねー! というくらい、声も呼吸も強烈に個性があるのだ。まず呼吸は、この世に産まれてから休むことなく繰り返されているだけに、癖が出やすい。そして声には、その人がどのように自分と、そして周りと関わってきたのかが如実に表れる。真剣に呼吸と声を聴かせてもらうと、その人の情報がありありと伝わってくるのだ。いい/悪いといった判断ではない。耳や鼻の形が違うように、ただ全員が違うというだけだ。だから、自分自身の長所を自覚してもらって、それを一緒に磨いて、成長できるように寄り添う。レッスンでは何よりそれを第一に考えるようになった。耳や鼻と異なるのは、声は「もっとよくなる」ということだ。

初めこそボーカリストや俳優など、プロか、プロを目指すタマゴたちに教えるのみだったが、徐々に紹介でいろいろな人が来てくれるようになった。ヨガやスポーツインストラクター、ヒーラー、講演家、ビジネスパーソンなどなど。声の力に興味を持つ人や、コンプレックスを抱える人がこんなにいるのだと、たくさんの出会いの中で気づかせてもらうこととなった。そして、一緒に練習していると、声がよくなるのは当然として、ほとんど全員が元気になっていくのにも気がついた。例えば、声が詰まっているのは、日頃から自分の感情を押さえつけているという理由もあったりする。そういった部分を丁寧に柔らかくしていけば、気持ちよく声が出せるし、いらぬ感情を溜め込まないので日々の生活も自然と変わる。さらには、練習を続けている生徒さんたちの話す言葉が変化していくというのも、とても大きな発見だった。呼吸と声を整えていくと、出てくる言葉も整ってくる。つまり、自分が何をしたいのか、何を感じ考えているのかが、真っすぐ伝えられるようになってくるのだ。焦りや苛立ちは呼吸を浅くするが、それを客観的に捉えることができれば、一時の感情に支配されずに済む。呼吸を深く落ち着かせれば、いま自分が何をしているのかがよく分かる。僕が長年しつこく伝え続けていることのひとつだが、本当に、声と呼吸は自分を映し出す鏡なのだ。他にも、風邪をひかなくなった、痩せた、安眠できるようになった、生理不順が改善されたなど、様々な効果を口にしてくれる人も多い。あくまでも個人の感想であって、それをこちらの宣伝文句にする気はないが、何よりも生徒さん自らその自覚を得て、嬉しそうに僕に報告してくれたというのが素晴らしいと思う。自分に気づくセンサーの感度が、声と呼吸を通して上がっていくことは、もちろん僕自身が一番実感している。


2011年からは音楽誌SOUND DESIGNERでの連載が始まり、ワークショップ、講座も多くやらせていただくようになり、これまで一緒に声を出した人の数はとうに四桁を超えた。声と呼吸に向き合う中で、涙を流す人もたくさんいる。理由はそれぞれにあると思うけれど、何か自分の深い部分に触れた時、そういうことが起こるように感じている。スタジオをVoice Therapyとしたのは、誰もが声を用いて自分を助けられるのだという提案であり、その価値を共有する場作りへの意気込み、宣言でもある。単に高い声を出したい、流行のアーティストのように唄いたい、そういった要望であれば、僕よりも適した指導者はいくらでもいるはずだ。いろいろな価値観があっていい。本気は何でも美しい。ただ僕は、僕が確信をもって行なっている価値をダイレクトに提供したい。それを必要としている人と分かち合うことに、正面から取り組みたいと考えている。

結局のところ、大切なのは屋号ではなく、「どういう志で」「何をやっているか」だと思う。どんな名称でもいいとまでは言わないが、やっていることさえ正しければ、結果的に体が名を表していくのだろう。今はとてもスッキリした気分で、実にワクワクしている。

Morning Lights Voice Therapy

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